前回は、紫外線の効果や危険性が波長により異なることをお伝えしました。
 その中で、塗料硬化用のLED照射器は波長が365nmもしくは395nmのUV-Aが主流で比較的安全だと書きましたが、とは言えシミやシワに代表される皮膚の老化を招く波長であり、当然ながら紫外線の暴露量はゼロに近いほど望ましいことに変わりはありません。

 では、どのような個人用保護具(PPE)を使えば、どの程度暴露量を減らすことが出来るのでしょうか。特殊な製品がいるのでしょうか。
 2020年末に弊社で取り扱っているハンディタイプのUV LED照射器『Spectratek UVLED InstaCure』で実際の数値を計測しましたので、その結果をご案内します。なお、測定には「サトテック 紫外線強度計 CENTER532 ST」という波長 260nm〜395nmの合算総強度を測定するデジタル強度計にて行いました。(これは製品設計・評価時の照度測定とは異なる方法での強度計測であり、商品スペックの案内ではなく、あくまで個人防護のための実験的な計測です)

紫外線強度の実験結果

 まずは、弊社のある兵庫県神戸市中央区で、2020年12月の晴れの日に太陽光を計測したところ、1.32mW/㎠でした。
 ちなみに、紫外線=日焼け=夏というイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、紫外線は季節に関係なく地上に降り注いでおり、一般的に、真冬でも真夏のピーク時の2~3割程度は地表に到達しているとされています。(参考:気象庁ホームページ/https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/info_uv.html )

 続いて、室内でInstaCureを使って計測していきます。
 まずはInstaCureと紫外線強度計を40mm離して照射したところ、約14.00mW/㎠でした。これは冬の太陽光の10倍、夏の太陽光と比べても2倍以上の強度です。例えば小さいワークを素手で持って近距離から照射した場合、ワークを持つ手にはこれぐらいの紫外線に暴露すると考えてください。(※比較的安全なUV-A波であり、ごく短時間で対象物の硬化が完了しますが、素手で対象物を保持しての照射はお止め下さい。作業対象物は必ず作業台の上に置く、ハンガーに吊るす等の方法で固定してから照射して下さい。)

 次に、ホワイトボードに対して40mmの距離から照射し、反射光の紫外線強度を測定したところ、紫外線のトリガー部分(グリップ部分)で0.04mW/㎠、照射ユニット前面・周辺で0.3~1.0mW/㎠程度となりました。これは、通常の使用方法であれば、防護しない場合でも真冬の太陽光より少ない暴露となるということです。

 さて、本題である、個人用防護具を付けて計測します。
 まずはUVカットサングラス(保護眼鏡)。InstaCureと紫外線強度計を40mm離して照射し、その間に製品付属のサングラスを挟みこんだ所、0.00mW/㎠となりました。
 次に、保護手袋。黒色ニトリルグローブの中に紫外線強度計を入れ、40mmの距離から照射したところ、やはり0.00mW/㎠でした。
 万が一至近距離で顔や手に照射した場合、防護具を付けなければ14.0mW/㎠の非常に強い紫外線に暴露することとなりますが、製品付属のUVカットサングラスや黒色のニトリル手袋を着用していれば眼や皮膚への影響をしっかりと抑えることが可能です。(尚、サングラスやニトリルゴム手袋は色や仕様により紫外線カット能力が異なりますので、実験結果はあくまで一例です。)

 また、防護具とは少し異なりますが、黒いポリエステル製ジャンパー(いわゆるイベントジャンパーのような裏地の無い薄手の製品)に紫外線強度計をいれて40mmの距離から照射したところ、0.01mW/㎠となりました。通常の作業時に半袖で作業されているような場合、硬化作業時は長袖の服を羽織って頂くと紫外線の影響がかなり抑えられますのでおすすめです。(なお、少し話は逸れますが、UVパテに含まれる成分は皮膚刺激性を持つものもありますので、パテ付け作業の際も手袋・長袖等の個人防護具を着用されることを推奨いたします)

■計測した紫外線量の一覧

2020年12月11日AM10時 神戸市中央区(晴れ)の太陽光線 1.32mW/cm²
InstaCureの照射光を距離約40mmで計測した場合 14.00mW/cm²
付属のサングラスを通して紫外線を計測(距離約40㎜) 0.00mW/cm²
ホワイトボードに反射した光を照射部前面で計測 1.02mW/cm²
ホワイトボードに反射した光を照射部横で計測 0.30mW/cm²
ホワイトボードに反射した光をグリップ部分で計測 0.04mW/cm²
付属のサングラスを通して紫外線を計測(距離約40㎜) 0.00mW/cm²
黒色ニトリルグローブを通して計測 0.00mW/cm²
薄手の黒い服(化繊)を通して計測 0.01mW/cm²

まとめ – UV照射器使用時の紫外線暴露と防護について

 長くなりましたが、結果をまとめますと、
① Spectratek UVLED InstaCureは晴れた日に地上に降り注ぐ太陽光よりもはるかに強い紫外線を照射可能
ですが
② 通常の作業時に暴露する紫外線は太陽に比べてもかなり少ない
しかも
③ 紫外線カットのサングラス、手袋、作業着等を着用すれば、ほぼゼロといえるレベルに抑えられる
ということがお分かりいただけるかと思います。


 UV-A波はもともと比較的安全な紫外線であり、適切に使用をしていれば紫外線暴露量は太陽光線よりはるかに低い暴露量ですみますが、さらに適切でさえあれば簡単な防護でもほぼ完ぺきに紫外線をカットできます。皮膚の弱い方や美容に気を使われる方でも、LEDタイプの紫外線照射器であれば安心してご使用いただけます。

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